
KS111 超硬合金
KS111 Carbideニッケルとタングステンカーバイドの均衡を取り直し、硬さとともに靭性をもたせた独自の配合。日本特殊合金との共同開発・製造によるもので、二ミリの板材として供給されます。
日本屈指の刃物技術者たちが思い描いた姿を、地上でもっとも硬い素材のひとつで形にしました。
福田刃物工業は百三十年にわたり、関の地で刃物をつくってきました。なかには五メートルを超えるものもあり、世界でもっとも過酷な産業の現場に応えるためのものです。KISEKI: は、手に収まるほど小さな一本を初めて手がけた仕事——世界初の量産超硬タングステンカーバイド製包丁であり、柄は岐阜の広葉樹から削り出しています。
福田刃物工業は百三十年にわたり、関の地で刃物をつくってきました。なかには五メートルを超えるものもあり、世界でもっとも過酷な産業の現場に応えるためのものです。KISEKI: は、手に収まるほど小さな一本を初めて手がけた仕事——世界初の量産超硬タングステンカーバイド製包丁であり、柄は岐阜の広葉樹から削り出しています。
福田刃物工業の技術責任者である恵介は、日本でキャンプが流行するよりはるか以前から、焚き火で料理をしてきました。そして包丁を手に取るたび、同じ壁に突き当たります。炭素鋼はよく切れるけれど、錆び、手入れを求める。ステンレスは切れ味を保つものの、どこか満ち足りない。両方を与えてくれる包丁は、どこにもありませんでした。
会社はほとんどどんな刃物でもつくれます。関の工場には、完全受注の産業用刃物が年間およそ一万件も流れていきます。ただ一つ、つくったことがなかったのが、包丁でした。
そこに現れたのが超硬合金——ダイヤモンドに次ぐ硬さを持つタングステンカーバイド合金であり、加工の難しさでも知られる素材です。伝統的な鍛冶の技では、これを包丁に変えることはできません。車より長い刃を手がけてきた技術者たちが、長さ十八センチほどの一本づくりに乗り出しました。
二年の歳月と、百を超える高価な試作材の失敗を経て、彼らは試作品を関にある創作和食の厨房へ持ち込み、料理人たちの手さばきを見つめました。料理人たちはそのまま離れず——この試みのもっとも厳しい批評者であり、もっとも強い支え手となったのです。
超硬合金は鉄のほぼ二倍の重さを持ち、磁石に応えず、錆を寄せつけません。けれどもプレスにかければ割れ、ドリルを当てれば欠けてしまう。そこで関の技術陣は、伝統的な工程のひとつひとつを精密加工に置き換え、その道のりで二件の特許と一件の意匠登録を得ました。

ニッケルとタングステンカーバイドの均衡を取り直し、硬さとともに靭性をもたせた独自の配合。日本特殊合金との共同開発・製造によるもので、二ミリの板材として供給されます。

打ち抜けば割れ、レーザーでは精度が足りない。そのため切り出しはワイヤー放電加工により、千分の一ミリの精度で行われます——一度に四十枚、一回あたり十時間をかけ、熱による歪みを残さずに。

一枚の刃につき、CNC研削におよそ三十分。百を超える試作から得られたデータに拠ります。三段構えの刃先は、欠けを防ぐ「スパークアウト」の仕上げ研削で締めくくられます。

岐阜に育った上質な国産広葉樹、ミズナラ、ヤマザクラ、ブナの三種から。関の工場で三次元加工を施し、ウレタン塗装で仕上げ、口金には手に馴染む細かな凹凸を与えています。

超硬合金に穴を穿てば微細な亀裂を招きかねません。そこで刃を受けるのは、射出成形したガラス繊維強化ポリアミドの口金——高級サバイバルナイフに用いられる素材で、岐阜の地元企業とともに開発しました。

どなたの手にも同じ刃先が届くよう、仕上がった包丁は一本ずつ三次元形状測定機にかけ、さらに手で確かめてから関を発ちます。千分の一ミリメートルの精度で見る品質管理です。
炭素鋼のように切れ、ほかに類を見ないほど切れ味を保ちつづける包丁。
技術者たちがともに答えを探しつづけた、二年の足どり。
故郷の刃物づくりを、ふたたび世界に見てもらいたいという願いを込めて。