Kayura
岐阜県関市 ・ 創業一八九六年

KISEKI:by 福田刃物

日本屈指の刃物技術者たちが思い描いた姿を、地上でもっとも硬い素材のひとつで形にしました。

福田刃物工業は百三十年にわたり、関の地で刃をつくってきました。なかには五メートルを超えるものもあり、いずれも世界でもっとも過酷な産業の用途に応えるためのものです。KISEKI: は、その手がはじめて掌に収まる小ささへと向けられた仕事——世界初となる量産の超硬タングステンカーバイド製包丁であり、柄は岐阜の広葉樹から削り出されています。

福田刃物工業は百三十年にわたり、関の地で刃をつくってきました。なかには五メートルを超えるものもあり、いずれも世界でもっとも過酷な産業の用途に応えるためのものです。KISEKI: は、その手がはじめて掌に収まる小ささへと向けられた仕事——世界初となる量産の超硬タングステンカーバイド製包丁であり、柄は岐阜の広葉樹から削り出されています。

01 — 物語

交わるはずのなかった、二つの理想。

福田刃物工業の技術責任者である恵介は、日本でキャンプが流行するよりはるか以前から、焚き火で料理をしてきました。そして包丁を手に取るたび、同じ壁に突き当たります。炭素鋼はよく切れるけれど、錆び、手入れを求める。ステンレスは切れ味を保つものの、どこか満ち足りない。両方を与えてくれる包丁は、どこにもありませんでした。

会社はほとんどどんな刃物でもつくれます。関の工場には、完全受注の産業用刃物が年間およそ一万件も流れていきます。ただ一つ、つくったことがなかったのが、包丁でした。

そこに現れたのが超硬合金——ダイヤモンドに次ぐ硬さを持つタングステンカーバイド合金であり、加工の難しさでも知られる素材です。伝統的な鍛冶の技では、これを包丁に変えることはできません。車より長い刃を手がけてきた技術者たちが、長さ十八センチほどの一本づくりに乗り出しました。

二年の歳月と、百を超える高価な試作材の失敗を経て、彼らは試作品を関にある創作和食の厨房へ持ち込み、料理人たちの手さばきを見つめました。料理人たちはそのまま離れず——この試みのもっとも厳しい批評者であり、もっとも強い支え手となったのです。

02 — 名前について

ひとつの名を、三つに読む。

奇跡きせき · ミラクル

炭素鋼のように切れ、そしてほかのどんな刃物にもない永さで切れ味を保つ包丁。

軌跡きせき · 歩んできた道のり

技術者たちが肩を並べ、答えを探しつづけた二年の道のり。

輝関きせき · 関市の輝き

故郷の刃物づくりが、ふたたび世界の目にとまるようにという願い。

03 — つくりの工程

刃物づくりのあらゆる作法を、それを拒む金属のために書き改めました。

超硬合金は鉄のほぼ二倍の重さを持ち、磁石に応えず、錆を寄せつけません。けれどもプレスにかければ割れ、ドリルを当てれば欠けてしまう。そこで関の技術陣は、伝統的な工程のひとつひとつを精密加工に置き換え、その道のりで二件の特許と一件の意匠登録を得ました。

合金

KS111 超硬合金

ニッケルとタングステンカーバイドの均衡を取り直し、硬さとともに靭性をもたせた独自の配合。日本特殊合金との共同開発・製造によるもので、二ミリの板材として供給されます。

切断

十時間のワイヤー

打ち抜けば割れ、レーザーでは精度が足りない。そのため切り出しはワイヤー放電加工により、千分の一ミリの精度で行われます——一度に四十枚、一回あたり十時間をかけ、熱による歪みを残さずに。

刃

一・二ミリまで研ぎ下げる

一枚の刃につき、CNC研削におよそ三十分。百を超える試作から得られたデータに拠ります。三段構えの刃先は、欠けを防ぐ「スパークアウト」の仕上げ研削で締めくくられます。

柄

岐阜の広葉樹

岐阜に育った上質な国産広葉樹、ミズナラ、ヤマザクラ、ブナの三種から。関の工場で三次元加工を施し、ウレタン塗装で仕上げ、口金には手に馴染む細かな凹凸を与えています。

接合

鋲も穴あけもなく

超硬合金に穴を穿てば微細な亀裂を招きかねません。そこで刃を受けるのは、射出成形したガラス繊維強化ポリアミドの口金——高級サバイバルナイフに用いられる素材で、岐阜の地元企業とともに開発しました。

検査

三次元で測る

どなたの手にも同じ刃先が届くよう、仕上がった包丁は一本ずつ三次元形状測定機にかけ、さらに手で確かめてから関を発ちます。千分の一ミリメートルの精度で見る品質管理です。